膝の後遺障害
膝の損傷は、下肢の後遺障害のカテゴリーに含まれます。
下肢の後遺障害としては、以下の5種類が主に問題となります。
①欠損障害 ②機能障害 ③変形障害 ④短縮障害 ⑤醜状障害
膝の損傷について
交通事故において膝が問題になる主な損傷として、
■ 膝蓋骨骨折
■ 半月板損傷
■ 十字靭帯損傷
があります。
膝蓋骨骨折(しつがいこつこっせつ)
<膝蓋骨骨折の症状>
膝蓋骨とは、膝のお皿と言われているもので皮膚のすぐ下に位置しています。
膝の前面を強くぶつけると、膝のお皿に外圧が生じ、骨折してしまうことがあります。
膝蓋骨を骨折すると、強い痛みが生じ、膝を自由に伸ばすことができなくなります。
<検査と診断>
X線検査で骨折を確認します。
<治療と後遺障害>
骨が離開していなければ、ギプスによる外固定を1ヶ月程度行います。
皮膚が裂けて骨がむき出しになってしまった時などは手術が必要になります。
単純骨折であれば、完治する場合も多い傷病です。
粉砕骨折や転移がある場合には、機能障害(可動域の制限)が生じることがあります。
半月板損傷
<半月板損傷の症状>
半月板とは、膝関節の大腿骨と脛骨の間にあり、クッションのような役割をしている軟骨の板をいいます。
膝に体重が加わった状態でひねったり、強い衝撃を受けることで損傷が生じます。
半月板を損傷すると、膝の曲げ伸ばしに痛みを感じたり、酷いものになると膝がほとんど動かなくなったりします。
<検査と診断>
MRIによって検査をするのが有用です。
間接鏡検査やマクマレーテストなどでも検査を行うことがあります。
<治療と後遺障害>
保存的治療(リハビリなど)が中心になりますが、改善しない場合には手術を行います。
手術は切除と縫合があります。
半月板損傷のみで後遺障害になることはありませんが、十字靭帯損傷と合併して機能障害(可動域の制限、動揺関節)が生じることがあります。
膝の関節可動域の測定
膝関節は、屈曲・伸展を主要運動として測定します。
参考運動はありません。
屈曲の可動域角度と伸展の可動域角度を合計した値をもって関節可動域を評価します。
例えば、屈曲:120度、伸展-30度のときは、可動域は90度です。
伸展では大腿骨の線とまっすぐに伸びるのが0度となり、まっすぐまで伸びきらない場合はマイナスの度数となります。
膝関節の可動域を測定するときは、
姿勢:仰向けになり、股関節を曲げた状態で測定。
基本軸:大腿骨
移動軸:腓骨(ひこつ)
で行います。
原則として健側の可動域角度と比較します。
参考可動域角度は屈曲:130度、伸展0度です。
下肢の後遺障害等級
① 下肢の欠損障害
等級 | 認定基準 |
1級5号 | 両下肢をひざ関節以上で失ったもの |
2級4号 | 両下肢を足関節以上で失ったもの |
4級5号 | 1下肢をひざ関節以上で失ったもの |
4級7号 | 両足をリスフラン関節以上で失ったもの |
5級5号 | 1下肢を足関節以上で失ったもの |
7級8号 | 1足をリスフラン関節以上で失ったもの |
② 機能障害
等級 | 認定基準 |
1級6号 | 両下肢の用を全廃したもの |
5級7号 | 1下肢の用を全廃したもの |
6級7号 | 1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの |
8級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの |
10級10号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
12級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
③ 変形障害
等級 | 認定基準 |
7級10号 | 1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの |
8級9号 | 1下肢に偽関節を残すもの |
12級8号 | 長管骨に変形を残すもの |
※「偽関節」とは、骨折後の骨片間のゆ合しようとする働き(骨折治癒機転)が止まってしまい、本来の動きとは違った異常可動をする関節のことをいいます。
④ 短縮障害
等級 | 認定基準 |
8級5号 | 1下肢を5㎝以上短縮したもの |
10級8号 | 1下肢を3㎝以上短縮したもの |
13級8号 | 1下肢を1㎝以上短縮したもの |