交通事故の治療関係費以外の積極損害
交通事故における治療関係以外の積極損害として、学習費や眼鏡・義歯・車椅子・介護支援ベッドなどの装置・器具、弁護士費用などが考えられます。
これらについては「必要かつ相当な範囲内」であれば認められるのが、裁判所の判断です。
非常に幅のある基準ですので、保険会社との交渉においては、高額なものについてはなかなか認めてもらうのは難しいのが実情です。
裁判例を提示したり、必要性を具体的に示すなどして、粘り強く交渉する必要があります。
裁判において認められた例としては、以下のようなものがあります。
学習費など
○高校生について、入通院のために休学した場合の退院後1年前後の補習費(横浜地判昭57.1.28)
○大学生について、1年間休学した場合の授業料(名古屋地判平3.8.30)
○高校生について、事故により留年した場合の授業料(東京地判平10.1.30)
○交通事故による怪我により無駄になった支払い済の授業料・通学定期代(東京地判平6.9.29)
装具・器具等購入費
○義足の購入費用(東京地判平8.3.27など)
○義歯の製作費用について、平均余命まで10年ごとに自由診療製作費の80%(東京地判平14.1.15)
○交通事故による歯牙欠損などの受傷について、インプラント費用(大阪地判平19.12.10)
※義歯・義眼・義足などについては、交換費用も認められた裁判例があります。
家屋改造費
2級以上の重篤な後遺障害事例で、浴室・便所・玄関・自動車などの改造費などが認められています。
○頸髄損傷による四肢完全麻痺などの障害(1級3号)の事例で、車椅子用の階段昇降機などの家屋改造費1778万円(東京地判平11.7.29)
○頸髄損傷(1級3号)の事例について、エレベーター・バリアフリーの浴室などの費用総額1206万円(東京地八王子支判平12.11.28)
葬儀関係費
葬儀費用は原則として150万円という基準があります。これを下回る場合には実費相当額です。
香典については損益相殺せず、他方、香典返しは損害としないのが裁判基準です。
○葬儀費用100万円の他に、墓石代267万円、墓地使用料52万円などを認めた(横浜地判平1.1.30)。
帰国費用・海外旅行キャンセル料
○交通事故による受傷程度が近親者の看護を要するものとして、留学中の近親者の帰国旅費を認めた(最判昭49.4.25)
○海外の旅行キャンセル料2名分10万円を認めた事例(東京地判平15.9.2)
診断書料・保険金請求手続き費用など
○刑事記録謄写費用として約15万円を認めた(東京地判平22.12.15)
弁護士費用など
弁護士費用については、裁判であれば認容額の10%程度が交通事故と因果関係のある損害として認められることがあります。
弁護士特約に入っている場合でも、加害者側の賠償義務が免除されるわけではないとした裁判例(名古屋地判平22.2.19)があります。